自賠責保険の仕組み
自賠責保険のしくみや慰謝料の計算方法を説明します。
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1.自賠責保険(強制保険)とは
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2.自賠責保険は自動車事故による対人賠償保険
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3.保険金の支払い基準と限度額
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4.自賠責基準での慰謝料計算方法
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5.複数の被害者または複数の自動車による事故の保険金額(タクシー乗車中に事故に遭ったら?)
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6.過失による減額制限
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7.七割以上の過失とは
1.自賠責保険(強制保険)とは
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自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償補償法(自賠法)に基づいて、
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自動車の運行により生命または身体が害された人身事故の被害者を救済する目的で、全ての自動車に対し、
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契約することを義務づけている強制保険です。※自賠責保険に加入せずに自動車を運行すると、
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1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられるとされています(自賠法86条の3第1号)なお、自賠責保険と同様のものとして、
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自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)があります。
2.自賠責保険は自動車事故による対人賠償保険
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「え!自賠責保険って車の修理代は出ないの?」と驚かれる方が、実際にいらっしゃいます。
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自賠責保険に入っているから、軽い接触事故ぐらいなら相手の修理代は出るだろう、と思っていたとのことです。
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自賠責保険は「他人の怪我に対する賠償」のお金が出るだけで、車とか塀とかガードレールなど「もの」の損害に対しては支払われません。
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「もの」の損害に対する賠償は、任意保険で補うしかないのです。
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また、自賠責保険は他人を死傷させたことによる損害について補償するものですので、
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自分が怪我をしたことによる損害を自分の加入する自賠責保険により補償を受けることはできません。
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自賠責保険の加入の対象となる自動車は、通常の4輪自動車、オートバイ、原動機付自転車などが含まれますが、
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足踏み式自転車は含まれません。
3.保険金の支払い基準と限度額
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自賠責保険の保険金は、国土交通大臣および内閣総理大臣が定める支払い基準に従って支払われます(自賠法16条の3)。
傷害(怪我)による損害は、支払い限度額120万円の範囲内で治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料が支払われます。
後遺障害による損害は、後遺障害の程度に応じた等級に従って75万円から4000万円を支払い限度として、
逸失利益および慰謝料などが支払われます。死亡による損害は、支払限度額3000万円の範囲内で葬儀費、
逸失利益、被害者本人および遺族の慰謝料が支払われます。
なお、死亡するまでの傷害による損害は、別途傷害による損害の支払いと同様に支払われることになります。
4.自賠責基準での慰謝料計算方法
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自賠責保険では慰謝料は1日あたり4,200円として、対象となる日数分を合計して算出する、という決まりになっています。
問題は「対象となる日数とはなにか」ということです。
具体的には、以下の二つの数値を比較して、少ない方の数値を対象となる日数としています。
1.治療期間(事故から完治日または症状固定日まで)の全日数
2.実通院日数(入院日数+実際に通院した日数)の二倍つまり、普通は治療期間の日数ですが、
通院頻度が「2日に1回以下」の場合は実通院日数の二倍、ということです。
例えば、交通事故に遭って20日間入院し、
退院後の通院期間が90日間(その間の実通院日数は30日間)だった場合1.の「治療期間」は 20+90=110日2.の「入院、実通院日数の二倍」は (20+30)×2=100日となりますので、少ない方の100日が対象となり100×4,200円=420,000円 が自賠責基準での慰謝料額となります。
5.複数の被害者または複数の自動車による事故の保険金額(共同不法行為)
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自賠責保険金額は1事故あたりではなく死傷した者1人当たりの金額ですから、1つの事故で複数の被害者がいても、
それぞれの被害者の支払い限度が減らされることはないのです。
また、加害者が複数いる事故の場合、保険金額を複数倍した額が限度額となります。
例えばタクシーと他の車の両方の過失によって接触事故が起きてタクシーの乗客が怪我をした場合、
乗客はそれぞれの車にかかっている自賠責保険に請求することができますから、
支払限度額は2倍(傷害についての損害なら240万円)となります。 -
ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー
タクシー乗車中に事故に遭ったら?-
タクシー乗車中に事故に遭った場合のことは、知っておくといいです。
自分が乗客として乗車中に、そのタクシーが事故を起こして怪我をした場合、事故の状況によって、
請求する相手や賠償金の「支払われ易さ」が違ってきます。
ⅰタクシーが壁にぶつかるなどの単独事故を起こしたときこの場合の請求相手は「タクシーの運転手(またはタクシー会社)」であり、
実際にはそのタクシーの任意保険と自賠責保険の対人賠償保険から支払われます。
ⅱタクシーが止まっているときに追突されるなど、別の車が全面的に悪いときこの場合の請求相手は「ぶつかってきた別の車の運転手」で、
実際にはその別の車の対人賠償保険(任意保険、自賠責保険)から支払われます。
ⅲタクシーと別の車の衝突事故で、出合い頭など「タクシーにも別の車にも、
どちらもあう程度過失があるとき(共同不法行為)タクシーと別の車の双方に過失がある場合は、
その過失の割合に関わらず被害者(乗客)はどちらに対しても、
治療費や慰謝料など損害額の全額について請求できるということになっています(いずれか一方の加害者(の任意保険会社)が損害の全額を賠償した場合には、後に加害者同士でお互いの過失割合に応じた清算が行われる)。
ただ、自賠責に関しては両方の自賠責保険を使うことができ、「限度額が二倍(つまり240万円)」となります。
賠償額が二倍、ではありません。つまり、通常であれば「先に自賠責から限度額の120万円をもらい、
その後120万円を超える部分について任意保険と交渉する」のが、共同不法行為の場合は「先に二つの自賠責から限度額の240万円をもらい、
その後240万円を超える部分について任意保険と交渉する」ということになります。自賠責の限度額が240万円になると、
損害額がその範囲内ですむ場合も多く、任意保険との交渉をする必要が無い、または非常に簡単に済む、ということがあり、
何かと便利です。自分が運転していない事故で関係車両が2台以上ある場合、必ず「共同不法行為」のことを検討しましょう。
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6.過失による減額制限(重過失減額)
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自賠責保険は被害者保護を第一の目的としています(自賠法第1条)から、被害者に重大な過失があった場合にのみ、
被害者の過失割合に応じて一定の減額がなされることになります。例えば被害者に7割以上の過失があるときは重過失減額の対象として、
保険金額を減額する扱いとなりますが、被害者の過失が7割以上であっても10割(加害者に過失がない)で無い限り、
傷害による損害については2割しか減額されません。後遺障害または死亡にかかる損害についても、
その過失割合に応じて2割ないし5割の減額しかされません。 -
自動車損害賠償責任保険の保険金等および自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払い基準
減額適用上の被害者の過失割合
減額割合
後遺障害または死亡に係るもの
傷害に係るもの
7割未満
減額なし
減額なし
7割以上8割未満
2割減額
2割減額
8割以上9割未満
3割減額
9割以上10割未満
5割減額
7.七割以上の過失とは(重過失減額に該当する場合)
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自賠責で被害者に7割以上の過失が認められる基本的な目安を以下に掲げてみます。
これは個別事情や各種の修正要素を勘案すると大きく数値が変わることもありますので、参考にとどめておいてください。
被害者の過失
歩行者
車
単車
7割以上
赤信号横断
一時停止違反
赤信号直進で右折4輪と衝突
8割以上
なし
赤信号直進で黄信号車と衝突
交差点で左側車両を追い越して左折した際の左側車両との衝突
9割以上
なし
非優先道路から優先道路との交差点へ進入した際の事故
停車中の交差点を左側から追い抜き、あいていた交差点で右からの横断車両と衝突